- 1、すべてがFになる
- 2、メルカトルと美袋のための殺人
- 3、未明の家 建築探偵桜井京介の事件簿
- 4、玄い女神 建築探偵桜井京介の事件簿
- 5、灰色の砦 建築探偵桜井京介の事件簿
- 6、原罪の庭 建築探偵桜井京介の事件簿
- 7、妖奇庵夜話 その探偵、人にあらず
- 8、仮面の島〈建築探偵桜井京介の事件簿〉
- 9、メルカトルかく語りき
- 10、ファイナリスト/M
1、すべてがFになる
四季さんと犀川先生の個性、そして人生観が魅力的。私は文系で凡人なので、二人の価値観とは相容れないですが。
そして萌絵はどうも苦手です…そばにいると苛々しそう。
あと娘さんが気になりました。名前を付けられず、母親に殺されるように教育され、母親から殺された彼女は、何を思って亡くなったのかな?彼女が不憫で、あまりこのシリーズを好きにはなれそうに無いです。トリックはすごいですし、発想も巧みなのですが、「天才のあり方」が肌にあいません。
ミステリー度:★★★★★
おすすめ度:★★★★☆
2、メルカトルと美袋のための殺人
超絶ド外道な銘探偵メルカトル鮎と、不幸な助手兼サンドバッグの美袋三条のトンデモコンビ。美袋さんが可哀想過ぎて可哀想過ぎて…。
両家ともクズですけどね。
一番「水難」が好きです。幽霊へのメルの対応が好き。
美袋さんが一番可哀想なのは「彷徨える美袋」でしょう。サドにはたまらんお話。名言は「いつか殺してやる」。
一番しょうもない殺人の動機だけどトリックの美しい「シベリア急行西へ」。
本当に「メルカトルと美袋のための殺人」なんですねこれ。美袋さんには強く生きてほしいです。 メルカトル鮎の完全犯罪が閉幕に至るまでの短編集。
一ヶ月経つとまた読みたくなる麻耶による麻薬本。
他所で、集英社版と講談社版では所々違うと聞いて、集英社版も探しています。
「水難」と「シベリア急行西へ」はこの一ヶ月で何度も読み返してしまうほど大好きです。「
「瑠璃鳥」は結末と美袋くんが痛々しくて読むのに勇気がいりますね。
ところで美袋くんは原理主義者とのことですが、原理主義者って「キリスト教では聖書は無謬であり、近代主義や合理主義を批判する」と広辞苑にあります。
美袋くんにとってメルは神様なんですね。だからあれほどに殺意を抱いても側にいるんですね。
ミステリー度:★★★★☆
おすすめ度:★★★★★
3、未明の家 建築探偵桜井京介の事件簿
心の「夜明け」を求める苦悩する人々の、解決に至るまでの物語。 このシリーズは建築物を使ったトリックより、「建築物に思いを込めた人々の心を、京介が鮮やかに解きほぐす」。
そういったミステリーだと思って読んだほうがいいです。 脇役になると思った人が意外によく働いたり、影が薄いと思った人が犯人だったり。
灘男さんと、家族の不器用な心の交流が切なくて、愛しいです。明音さんと仲良くね! 一番救いが無いのが、亡き奥方で、そこに救いが欲しかった。誰にも望まれなかった彼女は、なにを思って嫁ぎ、死んだのだろうか。
ミステリー度:★★★☆☆
おすすめ度:★★★☆☆
4、玄い女神 建築探偵桜井京介の事件簿
なんとなく先が予想出来ても、ラスト数ページの「真実」は予想外でした。「狩野都」が生きていること、「ナンディ」と同一人物だということも予測済み。
けれど、「カリ」の性別までは読めませんでした。ここに来てのカタルシス。もう爽快で、そして切なかったです。
要所要所にある伏線と、インドについての「想い」。それらが絡まり、そしてその果てにある狂おしいほどの情熱。もう、圧巻。
個人的に、祥子を庇った犯人のシーンがお気に入り。真のヒロインは祥子だった。今までヒロインになれなかった祥子が、最後にヒロインになれた瞬間です。
ミステリー度:★★★★☆
おすすめ度:★★★★★
5、灰色の砦 建築探偵桜井京介の事件簿
京介と深春の出逢い。物語に深みがあり、京介と飯村の議論が白熱。
これは、推理戦より建築物の討論のほうが激しいシリーズです(笑)
京介が深春に「君って本当に頭がいい」「僕には君が必要だ」という雨の中で満面の笑みを見せるシーンにきゅんとしました。
ようやく出会えた「友人であり理解者」。登場人物はごちゃっとして覚えにくかったです。宇津井とハジメをごっちゃにしてました。深春が大好きになるお話。
ミステリー度:★★☆☆☆
おすすめ度:★★★☆☆
6、原罪の庭 建築探偵桜井京介の事件簿
凄惨な猟奇的な事件の裏にある、純粋な子供ゆえの、母への思慕。蒼が物凄く良い子で、涙ぐみました。可哀想で、そしてどうしようもないほどに愛しいお話。京介は不器用だけどとても優しいんだなって痛感。トリックも、今までのシリーズでナンバー・ワン!
ミステリー度:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
7、妖奇庵夜話 その探偵、人にあらず
ラノベのっぽいファンタジーな世界観と、リアリティのある社会描写と心理描写が魅力的なお話でした。
女性の友情関係にある闇が一番恐ろしかったです。自分にも覚えの在る、身近な悪意がいつどのようにして悲劇へ転ぶか…。
これは現実にもありえるので余計恐ろしかった。
座敷童とマメが可愛すぎて可愛すぎて…。座敷童の「彼女」への想いは本当に「お母さん」だったのかな?男性として、一人の女性への淡い恋心もあったのでは?と夢を見てしまいます。
ミステリー度:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
8、仮面の島〈建築探偵桜井京介の事件簿〉
実は最後に至るまであまりの登場人物の多さに混線としていて、あまり理解出来ていませんでした。ラストでやっぱり、女性の書く女性の苦悩と男の身勝手は胸を刺すものがありますね。それが引き起こす最悪な悲劇。京介と真犯人のシーンは、ぞくっとくる気迫がありました。男女のすれ違う打算的な恋と、同性同士の恋とも愛とも、友情とも尊敬ともつかない想い。男女の恋という題材を仮面に、その奥にある素顔は同性同士の愛でした。とても残酷で、計算高く、同時にとても純粋な愛の終わり。
ミステリー度:★★★☆☆
おすすめ度:★★★★☆
9、メルカトルかく語りき
緻密な構成と明確な論理と推理の末に在る最凶の結末が読めます。 アンチ・ミステリーとはメルカトル鮎のためにある言葉。
あと脱字発見。持ってるのが初版だからかな? 九州旅行のやり取りが面白くて笑いました。やだこいつら可愛い。
答えのない絵本はもう訳がわからない。事故ってこと?外部犯ってこと?
収束は構成が面白くて引きこまれました。
密室荘は誰が犯人なのか…まぁ、メルカトル鮎な気もするけど。密室荘に来る前の犯行なら外部犯か…。今回はそんなんばっかだなー。予想外の外部犯。
でも再読すると答えのない絵本の感想が変わりました。そうか。「登場人物表」と「小説内」に書かれていない可能性があるのか…メタ推理だけど、メルカトル鮎というキャラクタと麻耶雄嵩という組み合わせでならあり得る。
「答えのない」→「犯人に纏わる人物描写が無い。抹消されている」みたいな。何度も読んでその度に感想が変わるので、飽きずに読めます。
ミステリー度:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
10、ファイナリスト/M
序盤は盛り上がり、中盤はだれます。良い線はいっているのに、あと一歩及ばない肩透かしなストーリー展開と主人公。厳しい言葉を羅列しましたが、私は凄く好きな一冊です。推理小説という意味でも青春小説としても面白くないかもしれません。キャラ小説としてもちょっといまいち。けれど、私個人としては凄く好きな一冊です。なんというか…青さが目立つので母性本能が擽られるんですよね。作家さんと主人公に。これから、頑張って欲しい作家さん。
ミステリー度:★★☆☆☆
おすすめ度:★★★☆☆